電気工事士という言葉を聞いたことがあっても、実際にどんな作業をしているのか、詳しく知っている人は意外と少ないかもしれません。特に高校生にとっては、「配線をする仕事」「電柱にのぼる仕事」といった、ぼんやりとしたイメージしかないこともあるでしょう。
しかし実際の業務は多岐にわたります。主な仕事は、建物や施設に電気を安全かつ正確に届けるための「配線工事」です。新築の住宅やビル、工場などに電気を通すために、壁の中にケーブルを通したり、分電盤(ブレーカーの箱)を取り付けたりします。また、照明やコンセント、空調設備などの取り付けや、古くなった電気設備の交換・点検といった作業も含まれます。
このほか、公共施設や商業施設など大規模な現場では、配線だけでなく電気を制御するシステム全体の設計や調整も行うことがあります。つまり、電気工事士は「電気の道筋をつくる職人」であると同時に、「安全な仕組みを整える技術者」でもあるのです。
こうした作業はすべて国家資格のもとに行われており、電気工事士には高い専門性と責任感が求められます。体力だけでなく、図面を読む力や細かな作業を正確にこなす注意力も必要です。大変な面もありますが、その分「人の生活を支える」やりがいの大きい仕事でもあります。
電気工事士の1日をイメージする――具体的な作業と流れ

電気工事士の一日は、現場の内容によって大きく異なりますが、ここでは一般的な現場作業の日をイメージして紹介します。
朝は早く、7〜8時には現場に集合することが多くあります。まずは朝礼でその日の作業内容や安全注意事項を共有し、作業チームごとに役割を確認してから作業に取りかかります。新築の建物であれば、設計図を確認しながら壁や床の中にケーブルを通したり、電気機器の設置場所に配管を取り付けたりします。
午前と午後に1回ずつ小休憩があり、お昼休憩を挟んで作業が続きます。電気の工事は「先行配線(骨組み段階)」→「器具取り付け(完成段階)」という流れが一般的です。たとえば、壁の中に見えないケーブルを通す作業は、建物が完成してしまうとできなくなるため、建設スケジュールの早い段階で済ませる必要があります。
午後は、設置した配線や機器の動作確認、最終的な仕上げを行い、17〜18時ごろに作業終了となります。場合によっては残業や夜間作業になることもありますが、安全第一で無理のないペースで作業が進められます。
また、1日のうちには「配線を引く人」「機器を取り付ける人」「材料を管理する人」など、それぞれの役割を分担して動いています。こうしたチームワークも大切な要素のひとつで、若手でも意見を出しやすい職場環境が整っているところが多いのも特徴です。
電気工事士の仕事はどんなところで役立っているのか

電気工事士の仕事は、私たちの暮らしの中に深く関わっています。電気が通っている場所すべてに、必ず電気工事士の仕事があるといっても過言ではありません。
たとえば、家庭の中では照明やコンセント、エアコンなど、普段当たり前のように使っている電気製品のすべてが、正しく動くように工事されています。これらの設備は、新築のときだけでなく、リフォームや修理の際にも工事が必要です。
また、工場やオフィスビル、病院、商業施設といった大規模な建物でも、電気設備は欠かせません。照明や空調だけでなく、通信システムや防犯設備、機械の動作に必要な配線もすべて、電気工事士が整えています。最近では、省エネ設備や太陽光発電、蓄電池の導入といった環境に配慮した電気工事の需要も増えており、ますます仕事の幅が広がっています。
さらに、災害が発生したときには、停電した施設や地域の電気を復旧させる役割も果たします。こうした緊急対応は非常に重要であり、地域社会の「インフラを守る仕事」としての使命感を持って取り組む人も多くいます。
このように、電気工事士の仕事は目立たないかもしれませんが、人々の生活や社会活動を支える非常に重要な役割を担っています。現場は常に変化があり、新しい技術や材料にも触れられるため、飽きることなく成長し続けられる職業でもあります。
高校生が「いまできること」――進路準備とスキルの習得

電気工事士を目指す高校生にとって、卒業後にスムーズに現場で活躍できるようにするためには、在学中から少しずつ準備を始めておくことが大切です。具体的に、どのような準備ができるのでしょうか。
まず第一に挙げられるのが、電気工事士の資格取得です。第二種電気工事士は、高校在学中でも受験可能であり、合格すれば就職活動や入社後に大きな強みになります。筆記試験と技能試験の2段階で構成されていますが、過去問題を繰り返し解くことで対策はしやすく、独学でも十分に合格が狙えます。時間に余裕のあるうちに計画的に取り組むことがカギとなります。
次に、普通自動車運転免許の取得も検討しましょう。現場間の移動や資材の運搬などで車を使う場面が多いため、免許を持っていることで現場での活躍の幅が広がります。できればマニュアル車(MT)にも対応できるようにしておくと安心です。
また、工具や材料に実際に触れる機会を持つことも有効です。授業の中で実習がある学校もありますが、もしそういった環境がない場合でも、自宅で簡単な工具の扱いに慣れておくことは無駄になりません。将来的に使うであろう「ペンチ」「ドライバー」「スケール(メジャー)」などの基本工具の名称や使い方を知っておくだけでも、入社後の成長スピードが変わってきます。
さらに、数学や物理といった基礎科目も意識して学んでおきましょう。特に、電気に関する基本的な法則(オームの法則など)は筆記試験にも現場でも頻出であり、高校レベルの基礎がしっかりしていることで理解がスムーズになります。
焦る必要はありませんが、「できることから少しずつ手をつけておく」ことで、周りよりも一歩先を行く準備が可能です。
学校との連携と企業選びのポイント

高校生が電気工事士を目指すうえで欠かせないのが、学校と企業との連携です。特に「指定校求人」や「学校推薦」といった仕組みは、高校卒業後に安定した就職先を見つけるための大きな支えになります。
まず、指定校求人とは、学校と特定の企業の間で直接やり取りがある求人のことです。学校に届く求人票には、応募条件や仕事内容、初任給、必要な資格などが詳細に記載されており、先生を通じて応募が進められます。企業側は「新卒を丁寧に育てたい」という意図で募集している場合が多く、教育体制がしっかりしているケースが多いのも特徴です。
また、学校推薦を受けるには、普段の授業態度や出席率、成績、面談での意欲など、総合的な評価が重要になります。推薦を得るためにも、日々の学校生活を大切にすることが、遠回りなようで実は近道でもあります。
さらに、企業選びの際には「自分がどんな働き方をしたいか」を明確にすることが大切です。たとえば、現場の種類(住宅・商業施設・公共インフラなど)、勤務地の範囲(地元中心か、出張ありか)、夜間作業の有無、資格支援制度の有無など、会社ごとに特徴は大きく異なります。求人票に書かれていない情報も多いため、できる限り現場見学や職場体験に参加し、自分の目で確かめておくと安心です。
信頼できる会社では、見学時にも丁寧な説明があり、安全への配慮や新人育成への姿勢が見えるはずです。こうした点に注目して企業を選べば、入社後のギャップも少なく、安心して働き始めることができるでしょう。
やること×締切チェックリスト(年度版)
電気工事士としての第一歩を踏み出すためには、どのタイミングで何をしておくべきかを具体的に把握しておくことが大切です。以下に、年度スケジュールをベースとした「やること×締切」の一覧をまとめました。
【高校2年生のうちに】
・電気工事士(二種)の受験準備を開始
・数学・物理の復習に取り組む
・工具や回路に関する入門書・動画で学ぶ
【高校3年生の春〜夏】
・第二種電気工事士の筆記試験を受験(例年5月頃)
・筆記合格後、技能試験に向けた練習(例年7月頃)
・企業見学に参加(夏休みを中心に)
・指定校求人の募集状況を確認
【高校3年生の秋〜冬】
・校内推薦の面談・応募手続き
・内定獲得後、履歴書・成績証明などの書類準備
・普通自動車運転免許の取得準備・教習所の予約
【卒業後〜入社まで】
・作業服・安全靴・工具などの準備
・勤務先の所在地や集合場所、持ち物の確認
・通勤ルートや公共交通機関の把握
・CBT方式の試験日程が利用できる場合は、改めてチャレンジも視野に
このように、やるべきことをあらかじめ整理しておくと、不安なく一歩を踏み出せます。もし計画の立て方や不明点があれば、学校の先生や就職担当の先生に相談することが大切です。
また、企業側に直接問い合わせて、就職前に聞いておくべきことを確認するのも良い方法です。不安や疑問がある方は、以下の問い合わせページから気軽に連絡してみましょう。
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